●Waipahu Family Health CenterでのNPの実践

●Waipahu Family Health CenterでのNPの実践

▽シャドーケース

  • 生理不順/妊娠希望の相談、治療中(30歳代)⇒検査結果説明、ホルモン治療開始のIC
  • 生理困難症、貧血、高血圧(20歳代)⇒検査結果説明、生活指導
  • 妊娠検査、初診推定29週妊娠2期(20歳代)保険未加入、健診未受診のため病院紹介
  • 妊娠検査、初診推定妊娠1期(20歳代)、保険未加入、学生未収入、支援者なし、ケースワーカー紹介

 

▽見学内容

  • 妊婦健診、physical examination
  • エコー検査
  • 妊娠初診時のhandout保健指導(定期健診に関すること、生活食事に関すること、分娩に関すること)
  • Social workerとの連携(情報共有)
  • Medical assistantとの連携(ordering、情報共有、教育場面)
  • 予約管理、未受診フォローアップ
  • 専用ポータルサイトでの患者からのメール対応(患者満足の向上)

 

▽このクリニックでの診療に関するメモ

  • 受診者のライフサイクルに合わせた健診スケジューリングによる予防活動。患者の来院にあわせて、これまでの受診履歴や検査履歴の確認を取りながら必要な検査を患者に説明し、了解を得て実施。
  • teenager clinicも行っている。友達と一緒に来院したTeenagerに集団相談。 支払義務はなく保護者も不要、避妊具相談も行っている。これが、若年層への性教育や避妊指導のチャンスになっている
  • 支払い困難者の診察、処方 ⇒ 今全額支払うお金がないのなら、あとから「募金」の協力をしている。
  • コミュニティセンターとしての役割を意識した患者対応の明確化が重要であるということと、全て慈善事業にするのではなく、give-and-takeのシステムとしての限界の在り方だと思った。

 

<NPとしての活動に関するメモ>

  • かかりつけ(PCP)が500人。これはNP活動の実績指標の一つと捉えられた。数字の大小ではなく、NPの実践の評価と存在価値の評価、両者があって得られる数字であり、NP独自のニーズがあることを実感できた。
  • 診療の診断や処方を行う際に、診断、治療におけるガイドライン、uptodateなどエビデンスを必ず確認していた。
  • 患者さんの権利、患者さんの教育、プライバシーへの配慮、訴訟への対策、患者満足の向上を意識して行っている。
  • 権利と責任と役割の線引きを意識して実践することで、客観的な判断と倫理的思考による矛盾にも適応した対応ができるのだと思った
  • 公式書類の取り扱いの権限(診断書関連)もNPにはある。
  • NP活動のポイントの一つは、自分の周囲のメンバーとのチームワークを円滑にする教育的関わりである。自分の働きやすさが、結果的にスタッフの成長と患者のメリットにつながる。
  • 自分の地域の医療課題について、自身の活動前後での現象をデータ比較することは、NP活動とNPの存在価値を上げることにつながる。アクションリサーチとして発表することで、第三者にも活動を評価してもらうことができる
  • 今回の見学で、RNとNPの決定的な違いとして感じたことは、責任意識と職務態度、学習意欲の違いである。

 

<NPの役割や倫理>

  • 今回の見学から、周産期だけでなく、生活習慣病へのアプローチを同時にできている、ここにプライマリケア領域における看護の最大の役割があると考えた。
  • 見学させていただいたNPから「言葉の違いより、文化や基礎知識の違いに苦労する」というお話が合った。これは、社会的背景がケアに与える影響が大きいということであり、非言語的コミュニケーション能力と相手を理解しようとする姿勢が、もっとも重要であることを示していると感じた。
  • 危険は冒さずに患者のニーズに対応する。患者のために、誠心誠意尽くすという姿勢の基本であり、決して拒否や否定をすることではない。信頼構築とNPのニーズを得るのに不可欠な折り合いをつける能力であると考えた
  • 見逃さないという意識と責任感は重要だが、one visitで完結しようとは思わないこと。診断までのプロセスを大事にすることで、関係構築と、正確な診断治療につながることを自身も忘れないようにし、患者にもそれを理解してもらうよう説明する。
  • 独りよがりにならない工夫、見逃さない自分なりの工夫、手順を守ることで自分の倫理観を保てる、柔軟な対応が自分のメンタルヘルスに重要であることが分かった。
  • プライドと存在価値を尊重していることを相手に伝えることで、自分自身も学べる姿勢になれる

 

<現場の課題>

  • 卒後NPの初期活動期のプリセプター問題。

 

▽まとめ

社会的背景や成り立ちの違いは確かに国内外ともにNPの具体的な活動内容に影響を与えている。しかし、みきさんのNPとしての実践を通して、看護の基本に立ち戻り、自分は何をする人ぞと改めて自問することで、NPの役割の共通点は存在するという考えをもつことができた。そして分野が細分化され、学位も複雑な状況に陥いることで、全体像が見失われ、統合しにくくなった部分が、本来の看護職者の存在意義だと考えられた。NPの社会的な地位や法制度確立による役割拡大、権限拡大は、今後の日本の医療事情にとっては重要ではある。しかし、目の前の患者に対して、最善のケアを考え、提供できるように整えることが看護職者の最大の役割であり、看護職者に求められた患者からのニーズはハワイの社会体制の中でも同じに感じた。みきさんはNPが何とどう違うかとか、特徴は何かという視点ではなく、最善のケア提供者の一人として存在していた。あくまでも社会的な枠組みで捉えた場合、権限や教育背景の違いでNPに分類されているのであって、医者やRNと競合したり、役割を線引きするようなポジションを敢えてとっていないのが印象的だった。各関係職種にとってメリットとなる部分に対して、自分にできることを発見し、歩み寄り、可視化する活動こそが、チームワークの中でのNPの役割発揮の一つと言えた。今後日本でのNP活動を取り組むにあたり参考にしていきたい点であり、一番現実的に活用できる学びであった。

診療の忙しい合間をぬって対応していただきました。