International Rural Nursing Conference 2016

International Rural Nursing Conference 2016

2016年7月19日から21日にかけて米国のサウスダコタ州で開催されたInternational Rural Nursing Conference 2016(国際へき地看護学会)に参加しました。

【学会の概要】

この学会はへき地の看護師やその他の医療専門家、研究者、教育者、指導者を対象に、歴史的貢献を含むへき地に住む人々の健康にとって重要なトピックについて議論場となっております。学会の主な目的は①医療サービスの提供を強化し、へき地の健康を改善するための過去、現在、および将来の課題と戦略を探る、②へき地における価値ベースのヘルスケアへの移行に対応するための創造的なアプローチを検討する、③へき地のヘルスケアへのアクセス、コスト、および品質を向上させるために必要なリーダーシップスキルを開発する、④へき地に住む人々を対象としたヘルスケアの質の向上に焦点を当てたグローバルな学習、コラボレーション、およびパートナーシップをはぐくむ環境を作ることとなっています。

 

【学会の参加者】

計247人の参加がありました。多くは米国からの参加者でしたが、イギリスをはじめカナダやノルウェー、インドやサウジアラビアといったの多くの国から参加者が集まりました。なお、参加者の詳細はページ下の表に記載しています。

 

【学会の主な内容】

1.基調講演

基調講演のテーマは『Intergenerational Basis for American Indian Health Disparities』で、アメリカインディアンの健康格差について講演されました。演者はDonald Warne博士です。

アメリカンインディアンの平均寿命は50歳代と短く、また、その他の人種に比べ、自殺率や乳幼児死亡率が高値であることや、アルコールや肥満の問題も指摘されています。その背景には、歴史的背景や貧困が存在しており、これらの問題は世代間連鎖をしているという内容でした。Donald博士からはこのようなへき地における問題を解決していくためには、学際的な多職種連携が必要であるとともに、問題解決に向けたリーダーの存在が求められるといったメッセージは発信されました。

 

2.口頭発表

口頭発表は、実践、教育、研究の3分野から構成されていました。特に印象深かった2件の研究を紹介します。

①肥満を有した幼児期の健康とアタッチメントにおけるアメリカンインディアンを対象にしたパイロット研究

インディアンの子どもの肥満が問題となっている。インディアンの親子を対象に絵本などを用いた健康的な食事に関する教育介入を実施した。その結果、教育介入の有効性が示された。今後は、教育プログラムの確立を目指すとともに、教育機関と連携した研究を実施する。

②サウスダコタにおける低所得者および無保険の乳がん検診受診状況

サウスダコタにおいて無保険者および低所得者は、無料で乳がん検診を受けることができる。本研究は、無 保険者および低所得者の乳がん検診受診状況を地域別に示した。その結果、検診受診率は10~20%台と低値であり、医療機関との距離が検診受診状況に影響していることが推察された。今後は、検診を受診しない理由について明らかにし、検診受診率の向上に向けた介入を検討する。

 

3.ポスター発表

ポスター発表では、へき地における臨床看護実践に関する報告が多くを占めていました。高齢者に対する音楽療法の有用性に関する研究や、若年者のホームレスに焦点をあて、ホームレスに至った理由について分析した研究といった興味深い内容の報告がなされました。

 

【まとめ】

International Rural Nursing Conferenceは、開催地であるサウスダコタ州をはじめ、米国内からの参加が多数を占めていました。主に、へき地における医療問題に焦点をあてた発表がなされていましたが、とりわけアメリカンインディアンの疾病リスクの高さが問題となっていました。その背景には、貧困や歴史的背景が影響しており、アルコールの問題など沖縄県の置かれている状況と類似した状況がありました。沖縄県においても、壮年期死亡率の高さが問題になっていますが、その背景因子については明らかになっていないことも多い状況です。今後は、沖縄県においても社会文化的背景をふまえた地域的な問題として健康問題の根本原因を明確にしていく必要性と課題があり、問題解決の一方策として、多職種の連携が重要になってくると考えます。

 

 

資料