CRANAplus 34th Conference 2016

CRANAplus 34th Conference 2016

2016年12月10日から14日にかけてオーストラリアのタスマニア州ホバートで開催されたCRANAplus 34th Conference(オーストラリア遠隔看護学会)に参加しました。

日本からの参加は初めてということもあり、CRANA Plusの雑誌にも取り上げられました(ページ下の資料をご参照ください)。

 

【学会の概要】

CRANA plusはオーストラリアにいる全てのリモート・ヘルス専門職を対象とした専門職業人の組織で、年に一度会議が開催されています。CRANA plusは30年以上にわたってオーストラリアの遠隔医療に携わる医療職者のための職業的および社会的リソースとしての役割を担っています。会議では遠隔ヘルスケアに関する政策や、治療に関する最新の知識を共有しています。

私たちが参加した第34回の学術集会では“GOING TO EXTREMES: How isolation, geography & climate, build resourcefulness & innovation in healthcare”のテーマのもと、遠隔看護に関する実践の他、政策や最新の遠隔医療に関する知見が報告されていました。

 

【学会の主な内容】

1.基調講演

基調講演はタスマニア州上院議員で医師でもあるBob Brown氏と元判事のMichael Kirby氏による講演となっていました。

Bob Brown氏気候変動と健康のテーマのもと、温暖化とデング熱の関連について触れ、環境保全の重要性を訴えるものでした。一方、Michael Kirby氏は同性婚に関する国民投票の議論という政治的視点から健康課題に対する個人の姿勢について話されました。健康問題を含む様々な問題は誰かが解決するものではなく、自分自身の問題としてどのように取り組む必要があるのか、リーダーは何を考えなけらばならないのか。アボリジニの人権問題も踏まえた幅広い視点からの問題提起となっていました。

 

2.特別講演

特別講演はオーストラリア人の看護師・助産師であるAnneliese Cusack氏から“遠隔看護の鍵”についてでした。

Anneliese氏はオーストラリアにおいて遠隔・へき地に住む人々のプライマリケアに従事し、その後カナダ北部から北極圏といった非常に広範囲に住む人々に対する医療活動に従事してきています。Anneliese氏は40年近い実践を通して、遠隔看護の鍵は資源の乏しさ、革新、そして集落であると述べていました。また、オーストラリア南極大陸局で展開されているオーストラリア南極大陸プログラムの実際に触れ、これまでの自身の経験から遠隔医療における総合診療医の育成やトレーニングの必要性についてのメッセージが発信されました。

 

3.口頭発表

遠隔看護師の実践の報告が多くを占めていました。また、医師や歯科医師、事務職などといった他職種の研究報告も数多くみられました。詳細はページ下の資料をご参照ください。

 

【まとめ】

本学会で行われた口頭発表のほとんどは、遠隔での看護実践の活動報告であり、遠隔看護師間のコミュニケーションやインターネットを介した教育など、遠隔看護師に焦点を当てた発表が多数を占めていました。印象的だったことは、新卒看護師が遠隔に行きたがらない傾向があり、遠隔で働く新卒看護師への支援が不足しているなどの現状の報告でした。本学においても、大学卒業後に島嶼の病院への配置を敬遠する学生がいることから、遠隔地を有する国や地域に共通する課題が示されていたと感じました。

また、遠隔に配置することで及ぼされる影響について、学生の満足と実践する意思という視点から評価している報告もありました。 本学でも島嶼での実習が行われていますが、その実習が学生に及ぼす影響については、明確な評価はされていない現状があります。今回得られた情報をふまえ、今後は、卒業後に離島の病院への配置を敬遠する理由について学部教育上の課題や卒業後の支援の状況などの視点から課題を明確にし、本学における島嶼看護の教育を促進するために、課題解決に向けて取り組む必要があると感じました。

 

資料